狭山市について

社会問題について考える!日本の若者の死因一位になってしまっている自殺について

この記事でわかること

  • 社会問題となっている若者の自殺についての動向
  • 埼玉県狭山市の取り組みについて

2006年に自殺対策基本法が制定後、自殺者は減少傾向にありますが、然として年間2万人を超える人が自殺により命を絶っています。

先進国の中でも若者の自殺者が多いとされる日本での取り組み、また埼玉県狭山市の取り組みについて調べました。

記事の最後には相談窓口の連絡先も掲載しています。

悩みを抱えている人や、悩んでいる人をどのように支えたらいいか分からない人も、まずは相談窓口を活用してみてください。

若者の死因第一位の自殺について

国が定義している若者とは以下です。

子ども・若者育成支援推進法の規定に基づき策定された「子ども・若者ビジョン」においては、対象となる者を以下のように定義している。

若者:思春期、青年期(おおむね18歳から30歳未満まで)の者。施策によっては、40歳未満までの者ポスト青年期の者も対象

内閣府 子ども・若者育成支援推進大網

今回は18~39歳を若者とします。

厚生労働省の平成30年(2018)人口動態統計月報年計(概数)の概況では以下のようなデータが公表されています。

年齢(歳)第1位第2位第3位
15~19自殺   不慮の事故悪性新生物
20~24自殺  不慮の事故悪性新生物
25~29自殺不慮の事故悪性新生物
30~34自殺悪性新生物不慮の事故
35~39自殺悪性新生物心疾患
厚生労働省 平成30年(2018)人口動態統計月報年計(概数)の概況

15〜39歳の死因第1位が自殺です。

若者の自殺がこれほど高い割合を占めているのは日本だけで、かなり深刻な状況といえるでしょう。

若者が自殺を選択してしまう理由

以下は小中高・大学・専門学生の男女別の自殺理由について、1番比率が高いものを一覧にした表です。

小学生中学生高校生大学生専門学生
男子家族からのしつけ・叱責学業不振学業不振学業不振学業不振
女子親子関係の不和親子関係の不和うつ病うつ病うつ病
警察庁 「自殺統計」より厚生労働省自殺対策推進室作成

小中学生では家庭や親子関係に起因するものが多く、中学生以降では学業など学校問題に関するものが多いことがわかります。

ただし小学生など、低年齢ほど遺書がなく突発的に行動を起こす傾向があるため、自殺理由の断定には注意を要します。

男女別でみると、男子学生は学業不振など進路にかかわる悩みの比率が高く、女子学生はうつ病が高い傾向です。

国としては学生自身がストレスの対処方法を身に付けるだけでなく、周囲の人が学生のSOSに気が付き、受け止められるような取り組みも重要視するようになりました。

以下は就業状況・年代別の自殺死亡率のグラフです。

年代が上がるにつれ、男性無職者の自殺が圧倒的に高い結果が出ています。

次は男女有職者、男女無職者の自殺理由について1番比率が高いものを一覧にした表です。

男女別の自殺の理由

有職者(働いている人たち)

10代20代30代
男性職場の人間関係仕事疲れ  うつ病   
女性うつ病うつ病うつ病
警察庁 「自殺統計」より厚生労働省自殺対策推進室作成

ある調査では、若年有職者のストレスの内容として10代は「仕事の失敗・責任の発生」、20~30代では「仕事の質・量」という結果が出ています。

10代男性有職者は若いころから働き始め、社会の厳しさに悩み、20~30代男性有職者は仕事で多くのことを任される年代で、仕事量に疲弊していることが背景として考えられます。

10~30代女性有職者の自殺理由は全てうつ病です。

これに続く結果として交際をめぐる悩み、うつ病以外の精神疾患、職場の人間関係、夫婦関係の不和などがあり、仕事のみならず人間関係全般で悩んでいる人が多い傾向です。

とくに若年有職者は社会経験が浅く、仕事に対するストレスも受けやすいでしょう。

同僚や上司など日ごろから若年層と関わる人たちがSOSを受け止めていくことが自殺予防対策として欠かせません。

国としては、メンタルヘルス対策やハラスメント対策の推進、身近な人の支えに加えて、相談窓口の設置や周知、連携が重要としています。

無職者

10代20代30代
男性うつ病うつ病うつ病
女性うつ病うつ病うつ病
警察庁 「自殺統計」より厚生労働省自殺対策推進室作成

男女無職者の自殺理由第1位は全てうつ病で、精神的にもハイリスクを抱えていると考えられています。

無職であるために社会との結びつきが弱く、悩みの相談相手がいない場合もあります。雇用の支援だけでなく、地域における居場所作りも大変重要です。

埼玉県狭山市の自殺の実態と対策

自殺を予防するには、国だけでなく地方公共団体や民間団体との連携も非常に大切です。

ここでは埼玉県狭山市の自殺の実態と対策について紹介します。

埼玉県狭山市の自殺の実態

狭山市では毎年20名を超える人が自殺しています。

2016年(平成28年)自殺対策基本法の改正を受け、地方自治体に計画策定が義務付けられ、狭山市自殺対策計画が策定されました。

狭山市自殺対策計画について

市民の声を反映させるために素案を公表、意見を募った結果が以下です。

  1. 自殺に至る前に止めることはできないのか
  2. 男性はコミュニケーションを取り、話す・相談する人がなかなかいないのでは
  3. 自殺者が多いことを自治会や回覧で掲示し市民に知ってもらいたい
  4. 男女比7:3で男性が多いことについての分析が必要
  5. 専門家の育成だけでなく市民レベルの啓発が必要
  6. 人対人の血の通ったかかわりが必要
  7. 自殺防止計画とか大仰なものでなく拙速でもいいから即実行してほしい。
    国からの指示ではなく狭山市として自立的にやつ必要がある
  8. 「こころの病気を抱えた方への相談・支援」に高次機能障害の方への支援について取り組みを入れてほしい

引用元:狭山市自殺対策計画に係る意見等の募集結果と市の考え方

実際のデータをもとにした、狭山市ならではの実現可能な計画を立案してほしいとの意見がよせられました。

狭山市の自殺対策計画:基本施策

市民の意見を受けて狭山市自殺対策計画が決定され、以下は基本施策です。

  1. こころの健康づくりの推進
  2. 自殺対策を支える人材の育成
  3. 自殺のリスクに対応する相談・支援の充実
  4. 児童・生徒に対するいのちを大切にする教育の充実
  5. 自殺対策における連携の強化

引用元:狭山市自殺対策計画

悩みを抱えている本人のこころの健康づくりだけでなく、その人を支える側の育成や各機関の連携など、広範囲にわたり定められています。

狭山市の自殺対策計画:重点サポート対象者

自殺者のデータをもとにハイリスクを抱えている高齢者・生活困窮者・勤労者を重点サポートの対象とし、それぞれに対して具体的な取り組みが決められています。

高齢者

現状取り組み
・狭山市の高齢化にともない高齢者の自殺者が増加 

・疾患・生活苦・介護疲れ・死別・離別などの悩みを抱えている人が多い
・高齢者のこころの健康づくりの啓発と相談窓口の周知

・自殺対策を支える人材育成

・チェックリスト活用による関係機関との連携強化
引用元:狭山市自殺対策計画

生活困窮者

現状取り組み

・経済・生活問題は2番目に多い自殺理由

・自立支援の相談件数は年々増加している
・こころの健康づくりの啓発

・経済・生活問題を含む相談・支援の充実
・チェックリスト活用による関係機関との連携強化
引用元:狭山市自殺対策計画

勤労者

現状取り組み

・自殺者数の中で40歳代男性が最多

・有職者のうち被雇用・勤め人が多い

・配置転換・過労・職場の人間関係・仕事の失敗等、自殺理由が複数絡み合っている

・30~40代で仕事量や内容に不満、悩み、ストレスを抱えている人が多い
・勤労者のこころの健康づくりの啓発と相談窓口の周知

・勤労者に関する相談・支援の充実

・チェックリスト活用による関係機関との連携強化
引用元:狭山市自殺対策計画

これらの対策は、狭山市健康づくり審議会や狭山市自殺対策会議でPDCAサイクルを活用し管理・評価されています

狭山市自殺対策計画は平成31年~35年度(令和5年度)の計画で、令和5年度には最終評価を行い次期の計画に活かされていきます。

埼玉県狭山市のこころの相談窓口一覧

以下はこころの相談窓口一覧です。

相談窓口と連絡先相談日時
保健センター(電話:2959‐5811)
・こころの相談日(隔月・偶数月・予約制)
・精神保健相談(隔月・奇数月・予約制)
月曜日から金曜日
8時30分から17時15分
祝日・休日・年末年始除く
狭山市保健所(電話:2954‐6212)月曜日から金曜日
8時30分から17時15分
祝日・休日・年末年始除く
埼玉県立精神保健福祉センター(電話:048‐723‐6811)
(予約制・来所相談のみ)
月曜日から金曜日
9時から17時
祝日・休日・年末年始除く
埼玉県こころの電話(電話:048‐723‐1447)
(埼玉県立精神保健福祉センター内)
月曜日から金曜日
9時から17時
祝日・休日・年末年始除く
社会福祉法人埼玉いのちの電話(電話:048‐645‐4543)24時間受付
NPO法人さいたまチャイルドライン(電話:0120‐99‐7777)(18歳以下)16~21時
携帯・スマートフォンからも可
※チャットで話せる曜日もあり
引用元:狭山市健康推進部 保健センター

若者の自殺防止には国・地方公共団体・民間団体が連携し取り組む必要がある

個人だけ対策をするのではなく、国・地方公共団体・民間団体が密に連携し若者の尊い命を守っていかなければなりません。

年代や性別、就業の有無など、状況によって抱える問題が異なるため、それぞれに合った支援を考えていく必要があります。

悩みや問題を抱えているけど、周りに相談できる人がいない場合や、周りに悩んでいそうな人がいるけど、どうしたらいいか分からない場合は、今回紹介した相談窓口へまずは連絡してください。