この記事でわかること
- ・埼玉県の不登校児支援について
- ・狭山市の不登校児支援について
文部科学省による「令和3年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」では不登校児童生徒数は244,940人で過去最多の数です。
不登校児童生徒数は9年連続で増加し続けており、日本の教育において深刻な問題となっています。
埼玉県狭山市で子育てをしている人にとっては、子どもが学校に上手く馴染めなかったらどうしよう、サポートがあるのかなど、不安に思いますよね。
埼玉県としても、狭山市としても不登校児に対する支援は行われており、本章で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
埼玉県の不登校児の現状について
埼玉県の不登校児の現状について、以下の調査結果があります。
総数 | 1,000人あたり | 前年度と比較した結果 | |
小中学校 | 8,934人(前年度8,275人) | 16.5人(前年度15.2人) | 増加 |
高等学校 | 1,707人(前年度2,179人) | 15.0人(前年度18.7人) | 減少 |
小中学校では前年度よりも増加、高等学校では減少しています。
高等学校に入ると不登校児の割合が減少しているのは、中学で不登校になった延長で高校には進学しない場合や、通信制高校に進学し通学できるようになった子どもが増加したためと考えられます。
不登校になる要因として、小中高共通で1位は無気力・不安という結果でした。
2位は小学校では生活リズムの乱れ・あそび・非行、中学校ではいじめ以外の友人関係をめぐる問題、高校では入学・転入・進級時の不安という結果が出ています。
年齢があがるにつれ、対人関係や将来の不安など、悩みの内容が複雑で深刻になるのが分かります。
子どもたちとその保護者のための不登校支援サイト
埼玉県教育委員会は、子どもたちとその保護者のための不登校支援サイトを立ち上げており、以下の情報が掲載されております。
埼玉県内の各市町村の相談窓口や民間活動団体や施設の紹介など、かなりの情報量なので以下の太字項目を抜粋して紹介します。
- 子どもの支援のために(講演資料・講演動画)
- 不登校の子どもと保護者を支援する民間活動団体・施設
- 埼玉県の相談窓口
- 市町村の教育支援センター(適応指導教室)
- 不登校についての体験談
- 技能連携校・通信制高校
- 市町村の相談窓口
- 不登校に悩む子供などが参加可能な市町村事業
- 保護者と教員のための不登校セミナー
- 高等学校入学者選抜(不登校の生徒などを対象とした選抜)
- 高校生活相談会
不登校についての体験談
ここでは、子どもたちとその保護者のための不登校支援サイト内で掲載されている、不登校についての本人体験談を以下の項目に沿って紹介します。
- 不登校になったきっかけ
- 学校に行かない時の過ごし方
- 当時の気持ち
- 保護者や先生にしてほしかったこと、してもらって嬉しかったこと・嫌だったこと
- 友人や大人(保護者・先生以外)にしてほしかったこと、してもらって嬉しかったこと・嫌だったこと
(引用元: 埼玉県教育委員会 子供たちとその保護者のための不登校支援サイト)
【本人体験談1 小5~小6 約2年】
内容 | |
きっかけ | 引っ越ししてきたばかりの時期で周囲の生徒と人間関係があまり上手くいかなかった・塾で疲労していた |
過ごし方 | 勉強・読書など |
当時の気持ち | 特に何も思わなかった 漠然とした不安はあった |
保護者や先生にしてほしかったこと、嬉しかったこと・嫌だったこと | 親がいろいろな本を図書館で借りてきてくれたことが嬉しかった |
友人や大人にしてほしかったこと、嬉しかったこと・嫌だったこと | 引っ越す前の友人と遊んだ時は素直に楽しめた |
【本人体験談2 小2・中2~3・高2 小:1年間・中:2年間・高:1年間】
内容 | |
きっかけ | 小2:担任の先生に精神的に追い詰められる 中2:学校の雰囲気に嫌気がさした 中3:さぼり癖が抜けず再度不登校になった 高2:将来に対する不安と葛藤、やる気の喪失 |
過ごし方 | 小2:覚えていない 中2~3:ゲーム。休日はボーイスカウト 高2:ゲーム。何もしていない時間も多かった |
当時の気持ち | 小2:感情が喪失(家族より) 中2:なにも考えていなかった。少しやばいなとは感じていた 中3:やばい事に気が付き、高校に進学する決意をする 高2:前半はやばいなと焦りがあったが、後半は何も考えられない状態。うつ病に近かった。 |
保護者や先生にしてほしかったこと、嬉しかったこと・嫌だったこと | 嬉:見捨てることなく最後まで自分という人間を尊重してくれた 嫌:期待される・変に構われる・考えを押し付けられる |
友人や大人にしてほしかったこと、嬉しかったこと・嫌だったこと | 嬉:出会っても普通にしてくれた 嫌:大勢で相談室に来られた |
【本人体験談3 中学1年の後半から 2年半】
内容 | |
きっかけ | 部活内の環境が嫌になり学校を休みがちになり、その後起立性調節障害になった |
過ごし方 | 1日中寝る・ゲーム |
当時の気持ち | 将来や学校のことを考えれば考えるほど不安になったり体調が悪化したりするので、できるだけ現実逃避して気を紛らわせた |
保護者や先生にしてほしかったこと、嬉しかったこと・嫌だったこと | 親はずっと見守ってくれていた。先生は授業やプリント、お便りを毎週家まで持ってきてくれて学校の様子を話してくれるのが嬉しかった。 |
友人や大人にしてほしかったこと、嬉しかったこと・嫌だったこと | 不登校のことを気にせず遊ぼうと誘ってくれたり、ゲームを一緒にやってくれて嬉しかった |
【本人体験談4 小2から 8年間】
内容 | |
きっかけ | 集団が苦手、感覚が敏感だった |
過ごし方 | 寝る SNS 親の仕事についていく |
当時の気持ち | 最初は罪悪感とかなかったけれど、しばらくしたら気が楽になった |
保護者や先生にしてほしかったこと、嬉しかったこと・嫌だったこと | 嬉:交換日記 嫌:家に来られること |
友人や大人にしてほしかったこと、嬉しかったこと・嫌だったこと | 嬉:色々教えてくれたこと 嫌:学校に行ったときに気をつかわれること |
【本人体験談5 中1の3学期~中学卒業まで 約2年】
内容 | |
きっかけ | なぜか分からないが学校に行きたくないと思い始めた。朝になると気持ちが悪いと言って登校を拒否した |
過ごし方 | 1日中ベッドで過ごし完全に昼夜逆転していた。中2の10月頃からフリースクールに通っていた |
当時の気持ち | 学校の人にはとにかく会いたくなかった。何もする気が起きなかった |
保護者や先生にしてほしかったこと、嬉しかったこと・嫌だったこと | 嬉:兄弟が何も言ってこないでくれたのが有難かった 嫌:中2の頃の担任の先生が「いつから来れるのか」「テストは来週だぞ」と言ってくることが苦痛だった |
友人や大人にしてほしかったこと、嬉しかったこと・嫌だったこと | 連絡をくれるのは嬉しかったが、学校に行っていない自分が何を言っていいのか分からず、返信が辛かった。 |
5件の体験談から、嬉しかったことに共通しているのは以下でした。
- 「何も言わずにありのままの自分を受け止めてくれた」
- 「普段と変わらず接してくれた」
嫌だったことに共通しているのは以下でした。
- 「圧をかけられるのが嫌だった」
- 「変に構われたり気を遣われるのが嫌だった
学校へ行けない状況を無理に変えようとするのではなく、そのままの子どもを受け止め、普段と変わらず接したり見守ったりすることがサポートの1つであると考えられます。
このような本人たちの声や現状を受け、埼玉県教育委員会ではさまざまなセミナーや相談・交流会が実施されています。
次章より紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
保護者と教員のための不登校セミナー
保護者の会やフリースクールなどの民間支援団体、県立学校がブースを設置して、教育相談や情報提供できる場が設けられています。
子どもや生徒の不登校は、保護者や教員にとっても大きな悩みなので、同じ立場同士の交流はこころの支えになります。
また、子どもの不登校は周囲に相談しにくい悩みでもあり、情報が受け取れる場は保護者にとっても貴重な場であります。
高校生活相談会・高等学校入学者選抜
年齢が上がるにつれて、受験や漠然とした将来への不安を抱えるかもしれません。
高校生やその保護者、高校を中退した人を対象に高校生活相談会の実施、不登校の生徒を対象とした高等学校入学者選抜も実施されています。
高等学校入学者選抜は、原則としてすべての全日制及び定時制高等学校で実施され、在学中学校の校長が認めた場合など、条件があります。
高等学校入学者選抜については動画でも配信されており、さまざまな形式で情報が得られるので、ぜひ参考にしてみてください。
今回紹介した不登校の本人体験談、セミナーや相談会、高等学校入学者選抜は、すべて子どもたちとその保護者のための不登校支援サイト内に掲載されています。
令和5年度の情報は未掲載ですので、最新情報について埼玉県教育委員会に問い合わせてみてもいいかもしれませんね。
子どもたちとその保護者のための不登校支援サイト
→https://www.pref.saitama.lg.jp/f2209/futoukoshien/index.html
狭山市の不登校児支援について
狭山市の不登校児支援には、学習の場の提供やホームページによる情報提供など、形式はさまざまですが、主には以下があります。
- 狭山市立教育センター
- 狭山市教育ネットワーク
- 教育支援センター 適応指導教室「けやき」
- 学習総合支援センター 埼玉狭山教室 アクトコア
- さやまルシェ(フレンズ)
次章より、それぞれを紹介していきます。
狭山市立教育センター
狭山市としての相談窓口には狭山市立教育センターがあります。
対象者は狭山市内の幼児、小学生、中学生とその保護者、狭山市内の保育園、幼稚園、小学校、中学校に勤めている教員、地域住民も含みます。
相談内容としては、子育て全般の悩み、友達付き合い、不登校・学校生活の悩みなど幅広く対応されています。
相談形式 | 日時・連絡先 | 備考 |
来所相談 | 月曜~金曜日の9時から17時(祝日除く) 電話にて要予約(04‐2956‐2292) | 相談室で対話 |
訪問相談 | 未掲載 | 保護者の要請により家庭や学校に訪問 |
電話相談 | 月曜~金曜日の9時~17時(祝日除く) 電話:04‐2956‐2293 | 匿名可能、相談内容は厳守 |
不安を抱えている、悩んでいることがあったら、一度相談してみるのもいいですね。
住所:〒350‐1304 埼玉県狭山市狭山台2丁目7番地の4
電話:04‐2956‐2299
FAX:04‐2956‐0499
アクセス方法:西武新宿線狭山市駅東口下車、西武バス「狭山団地行き」又は「新狭山駅南口行き」に乗車、狭山台2丁目で下車、徒歩約3分
狭山市教育ネットワーク
https://www.sayama-stm.ed.jp/center/index/
平成18年4月に開設された狭山市立幼稚園・小学校・中学校、狭山市立教育センター等の情報提供をしているサイトです。
幼稚園は市内の2園、小学校は15校、中学校は8校のホームページにアクセスできるようになっており、各学校の情報収集ができます。
ほかには県や市の教育計画や学習状況調査の結果などについても掲載されています。
幅広く情報収集したい際には利用しやすいサイトです。ぜひご活用ください。
教育支援センター 適応指導教室 けやき
https://www.sayama-stm.ed.jp/center/index/sodan/keyaki/keyaki.html
子どもたちの、げんき・やさしさ・きぼうが広がる場所という思いが込められた教室です。
指導員や相談員が、けやきへ通う子ども一人ひとりのペースに合った方法で学習や活動をサポートしています。
施設利用の流れは電話→数回の面談→見学と体験→約2週間の仮入級→入級式です。
畑作業・飼育、スポーツや音楽活動など、身体を使う時間があったり、お昼12時30分で終了の日があったりなど、子どもの負担になりすぎないように活動と休息がバランスよく組み込まれています。
実際の施設内の雰囲気や通っている子どもの様子を見るために、一度見学してみてもいいかもしれませんね。
学習総合支援センター 埼玉狭山教室 アクトコア
http://www.akuto-koa.jp/parents.html
2001年に開設された学習総合支援センターです。
対象児童に年齢制限はなく、勉強面から精神面、社会面と、総合的に子どものサポートができるようにカリキュラムが組まれています。
勉強面では、不得意分野の克服と同時に得意分野の引き上げができるようサポートされています。
このサポート方法により、モチベーションの維持・自主性の育成がされ、国立大学や難関高校の合格者も出しています。
精神面のサポートとしては、カウンセリングの知識を持っている講師を起用することで、子どもたちが精神的にも安心して学習できる環境を整えています。
社会面の育成も重要視されており、ソーシャルスキルやコミュニケーションスキルの低下予防、向上を目指しています。
社会面の発達は大人になってからの影響も大きいので、アクト・コアでは教育の根幹とされています。
具体的な学習コースやその料金などはホームページをご確認ください。
さやまルシェ
https://sayama-portal.jp/sayama_shogaigakushu/00000012241/
狭山市内のお店や施設など、生活情報を提供しているサイトです。
サイト内にフレンズというサークルが紹介されており、不登校を考える陽だまりの会や親のおしゃべり会、年齢別の交流会などが開催されています。
子ども同士、または親同士、親と子供などさまざまなつながりができるように構成されています。
活動頻度は月に数回で、入会金は500円、年会費は3600円です。
年齢が近い人とのつながり、似たような悩みがある人との交流は心の支えにもなります。
ぜひ一度、問い合わせしてみてはいかがでしょうか。
狭山市にも取り入れてほしい取り組み
さいたま市の不登校等児童生徒支援センター(通称Growth)では、以下の条件に該当する児童を対象に、オンライン学習等のサポートをしています。
- 市内の小中高、中等教育学校に在籍している
- 30日以上通学できていない
- オンライン学習等を希望している
Wi-Fi環境は必要ですが、端末は学校から配布されるので、端末代などの大きな出費の心配はありません。
プログラム例として、オンライン授業、オンラインホームルーム、オンライン体験学習・運動などが挙げられています。
相談支援センターなどに出向くことにストレスを感じてしまい、学校や社会とのつながりを持てない子どもにとっては、さいたま市のような方法があれば一歩を踏み出しやすいかもしれません。
埼玉県や狭山市の支援を活用しましょう
埼玉県としても狭山市としても、不登校児への支援はしっかりと行われていることが分かりました。
学校へ行けず悩んでいる人やその保護者、周囲の大人など、今回紹介した窓口へ一度相談してみてはいかがでしょうか?
一人ひとりに合った支援方法が見つかることを願っています。